令和8年7月28日に発生した熊本地震により、被災された事業主の皆さま、従業員の皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
厚生労働省は、この地震の影響で事業活動の縮小を余儀なくされた事業主を支援するため、雇用調整助成金の特例措置を実施することを発表しました。従業員の雇用を守りながら経営を立て直すための強い後押しとなる制度です。本記事では、その内容を分かりやすく整理してご紹介します。
雇用調整助成金とは
雇用調整助成金は、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者に対して一時的な休業、教育訓練、または出向を行うことで雇用の維持を図った場合に、休業手当や賃金等の一部を助成する制度です。今回、熊本地震の影響を受けた事業主向けに、要件が大幅に緩和された特例措置が設けられました。
特例措置の対象期間
休業・教育訓練・出向の初日が令和8年7月28日から令和9年1月27日までの間であることが対象条件です。
助成の対象となるのは1年間の期間内に実施した休業等で、上限日数(1年間で100日)に達するまでが助成対象となります。たとえば週5日勤務の事業所で週の半分を休業させた場合、約10か月分の助成を受けられる計算になります。
特例措置の内容
全国の事業所が対象となる5つの特例
熊本県以外の事業所であっても、以下の特例が全国一律で適用されます。
- 対象事業主の拡大:熊本地震に伴う経済上の理由により事業活動を縮小する事業主が対象になります。
- 生産指標の確認期間の短縮:通常3か月分必要な生産指標の確認期間が、1か月に短縮されます。
- 雇用量増加時の取扱い緩和:最近3か月の雇用量が前年比で増加していても、助成対象になります。
- 新設事業所への配慮:地震発生時点で事業所設置後1年未満の事業主も助成対象となります。
- 計画届の事後提出が可能:通常は事前提出が必要な計画届について、事後提出が認められます。
熊本県内の事業所だけに適用される追加措置
熊本県内の事業所には、上記に加えてさらに手厚い2つの追加措置が用意されています。
- 残業相殺ルールの撤廃:通常、休業と所定外労働(残業)が同時に発生すると、その分だけ助成対象の休業日数が減らされますが、今回の特例ではこの取扱いが撤廃されます。復旧作業などでやむを得ず一部社員に残業をさせても、助成額が減額されません。
- 教育訓練の助成率引き下げルールの撤廃:通常、支給日数が30日を超えた後、教育訓練の実施率が10%未満だと助成率が引き下げられますが、この特例では引き下げが行われません。
「経済上の理由」に該当する具体的なケース
今回の特例における「経済上の理由」には、以下のようなケースが含まれます。
- 需要の減少や風評被害による販売・集客の困難
- 取引先の被災による原材料・商品等の取引困難
- 交通の途絶による輸送・通勤などの生産・販売環境の悪化
- 電気・水道・ガス等の供給や通信の途絶・困難による生産・販売環境の悪化
- 損壊した施設・設備の修理業者手配や部品調達に、災害の影響で期間を要する場合
なお、地震により施設や設備そのものが直接的な被害を受けて事業を休止・縮小する場合でも、その休止・縮小が上記1〜5のいずれかの理由を伴うものであれば、「経済上の理由」があるものとして取り扱われます。つまり、建物の損壊だけでなく、そこから派生する経済的な影響も広く対象になる点がポイントです。
その他の留意事項
- 雇用保険の適用事業所であることなど、通常の要件も満たす必要があります。
- 助成金を申請した事業主は、提出・提示した書類の写しなどを支給決定日の翌日から起算して5年間保存する義務があります。
- 詳細な要件は、厚生労働省の雇用調整助成金特設ページに掲載されているガイドブック等でご確認ください。
中小企業庁による支援措置もあわせてチェック
雇用調整助成金以外にも、中小企業庁では被災した中小企業・小規模事業者向けに次のような支援を実施しています。
- 特別相談窓口の設置
- 災害復旧貸付等の実施
- セーフティネット保証4号の適用
- 既往債務の返済条件緩和等の対応
- 小規模企業共済災害時貸付の適用
- 官公需を含めた中小受託事業者との適正取引に関する配慮要請
資金繰りに不安がある事業主の方は、中小企業庁のホームページも併せてご確認ください。
参考リンク(厚生労働省)
〇雇用調整助成金 令和8年熊本地震特例
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL08_20260820_00001.html
〇雇用・労働に関する特例措置や支援制度(令和8年熊本地震について)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000134526_00005.html
参考リンク(中小企業庁等)
〇令和8年熊本地震に伴う災害関連情報|中小企業庁
https://www.chusho.meti.go.jp/saigai/r8_kumamoto_jishin/index.html
〇令和8年熊本地震に伴う災害に関して被災中小企業・小規模事業者支援措置を行います(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/press/20260729003.html
〇令和8年熊本地震に伴う災害に関する被災中小企業・小規模事業者対策について|中小機構
https://www.smrj.go.jp/reconstruction/news/2026/qsktgp0000003rmo.html
まとめ
今回の特例措置は、熊本地震で事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、従業員の雇用を守りながら事業の立て直しに専念できるよう、生産指標の確認期間の短縮や計画届の事後提出など、通常よりも柔軟な運用が認められています。特に熊本県内の事業所には、残業相殺ルールの撤廃など、さらに手厚い措置が用意されています。
なお、特例措置を受けられるかなどの相談のほか申請にあたっては、最寄りのハローワークや労働局、または社会保険労務士への相談も検討しながら、制度を正しく活用して雇用の維持につなげていただければと思います。
※本記事は令和8年9月16日時点の厚生労働省等の発表内容に基づいて作成しています。最新の情報は厚生労働省等の公式サイトでご確認ください。
