この記事は、筆者のブログ記事「事業再生における肝と付録『今後の地方・地域経済、コンパクトシティ(巨大集落)の推進』」の内容から一部を抜き出し、再編集、加筆修正等し、再掲したものです。
地域金融機関を取り巻く経営環境の変化
地方銀行の再編加速と収益モデルの転換 ―「融資」から「投資・支援」への脱却―
最近、新聞などで、メガバンク以外の地方銀行同士でのアライアンス(業務提携)やM&A・事業承継支援ファンドの組成、フィナンシャルグループをハブにした経営統合に関する記事をよく見かけるようになりました。目新しいところでは、群馬銀行と第四北越フィナンシャルグループ(FG)が2027年4月、経営統合し持株会社「群馬新潟フィナンシャルグループ」を設立する事例などがあげられます。
このように地方銀行同士の経営統合等が活発化する背景には、市場環境の変化と人口減少、地域中小企業の深刻な後継者不足と、収益力の向上(コスト削減)、地銀の収益モデル転換(高度な金融サービスの提供、「非金利」ビジネスへの転換)などを要素にした「地方経済の衰退への危機感」と「経営体質の強化」2つの側面があるかと思います。
具体的には、長く続いた低金利と人口減少で本業(融資)の儲けが減るなか、規制緩和(2019年の銀行法施行規則改正により、銀行による100%出資の「投資専門子会社」設立が解禁)を追い風に、地域の会社を救いながら新しい収益源を作るために、投資や再編に動いているようです。要約すると、「収益モデルの限界(「融資」だけでは稼げない)」「地域経済の危機(深刻な後継者不足など)」「コスト削減と競争力強化(「単独」では生き残れない)」ということでしょうか。
それを裏付けるかのように、「2024年に実行された事業承継M&Aは922件うち107件が地方銀行などが絡むファンドなどの投資会社が介在しており、10年前との比較では10倍になった」そうです(レコフデータ調べ)。
地銀の次は「信金」か ―都道府県を跨ぐ広域連携が示唆する再編の足音―
このように経営統合ほか収益モデルの転換を図っている地域金融機関ですが、今後、地銀での再編は、現在のところ、ひと段落し、今後は、信金同士での業務提携や合併が増えていく可能性が高いようです。
これを裏付けるかのように、日本経済新聞の本年2月25日付朝刊(P7)に、岡崎信用金庫(愛知県岡崎市)と浜松いわた信用金庫(静岡県浜松市)の業務連携発表に関する記事が報じられています。記事によると「双方の融資先企業のM&A(合併・買収)支援などを通じ、地域経済の活性化につなげる。」とされています。
記事でも触れられていますが、信用金庫は、信用金庫法第10条の規定により、融資や預金の取引が行える範囲については、営業区域(地区)内、または、主には地区内在住、中小零細企業たる会員のみという制限を受けています。
このため、都道府県を跨いだ広域連携や融資については、信金中央金庫「以下「信金中金」)がハブとなり、地方の枠を超えて都市部の需要と結びつけるケースや、隣接する県同士で経済圏を共有するケース(産学官連携による広域ビジネスマッチングや隣接県同士のインフラ・観光広域連携など)、信金中金や商工組合中央金庫がアレンジャーとなるシンジケードローンへの参画が主なものだったようです。
しかし、前記の日経新聞の記事のとおり、「収益モデルの限界」「地域経済の危機」「コスト削減と競争力強化(「単独」では生き残れない)」などを背景に、信用金庫による都道府県を跨いだ広域連携は、現在進行形で非常に活発になっていると思われます(参照事例「中小企業向け創業・育成&成長ファンド『しんきんの翼第2号』の組成について」(信金キャピタル株式会社ホームページより)。
このような都道府県を跨いだ広域連携の動きは、その延長線上として、単なる連携から信用金庫の再編(合併等)に繋がっていく可能性を示唆しているものと思われます。
金融機能強化法等の改正
さらにこれを後押しするように、現在会期中である第221国会(特別国会)に、「金融機能の強化のための特別措置に関する法律等の一部を改正する法律案」(2026年2月27日閣議決定)が提出されています。この法律案は、「人口減少等の環境変化の中で、地域金融機関等(地方銀行、信用金庫、信用組合)が経営基盤の強化を図り、地域経済に貢献する役割を十分に発揮して いくための環境整備の一環として、金融機能強化法の資本参加制度・資金交付制度の期限延長・拡充等を行う。」(金融庁ホームページより。ただし、マーカー部分は筆者が追記)ことを目的としています。
資本参加制度(2004年8月施行)と資本交付制度(令和2021年7月施行)は、金融機能強化法に元々あった制度です。今回の改正は、元々あったこの二段構えの制度を人口減少等の環境変化による地域経済の地盤沈下(収益性の低下)をこれ以上悪化することを防ぐため、制度の恒久化・拡充または、出口戦略を見据えた期限延長及び拡充という文脈で説明できるかと思料します。
詳細な説明は、本記事では省略いたしますが、資本参加制度による公的資金による資本参加(公的資金の注入で、返済必要)については、申請期限を2026年3月末から「当分の間」と改正する予定です。法律で「当分の間」とされた事項については、通常、「期限なし、恒久化」を意味します。また、過去に、資本参加制度の適用要件について、東日本大震災発生時及び新型コロナ蔓延時に要件を緩和する特例制度が臨時的に行われましたが、今回の改正では、南海トラフ地震などの将来的な大規模災害や、新たな感染症の蔓延時に、迅速に資本を注入して金融機能を維持できる体制をあらかじめ整備されることになっています(告示での運用)。
そして、本記事の内容と大きく関りがある資金交付制度の改正内容ですが、こちらも詳細な説明は省略させていただきますが、従来の「経営不振による救済型」の合併だけでなく、デジタル投資(DX)や専門性の強化を目的とした「前向きな経営統合」を強力にサポートする内容になっています。
まず、「合併・経営統合等」については、現行(上限額30億円、補助率1/3)から「上限額50億、補助率 銀行1/2・信用組合・信用金庫等1/2)」に、更に、地域の持続可能性の確保等に特に資する場合については「上限額75億円、補助率1/2」とされる予定です(地域内でのシェアが高まる合併を特例的に認める独占禁止法の特例法が2030年11月に期限を迎えることに足並みを揃え、申請期限は、2026年3月末から2031年3月末に延長。)。
また、合併・経営統合まで踏み込まずとも、地域経済活性化に向けた取組を前提に、事務やシステムの効率化を図る「システム共同化」が新たに支援対象となりました(申請期限は、設計・開発期間等考慮し、2036年3月末)。こちらについては、共同システムへの新規加盟等の場合「上限額15億円、補助率 銀行1/4、信用組合・信用金庫等1/3」、中央機関等(信金中金や全信連等)による協同組織金融機関(信用組合・信用金庫等)のための共同システムの更改の場合「上限額150億円、補助率1/4」になる予定とされているほか、株式取得による子会社化を支援対象に追加、システム共同化に伴うシステムの解約違約金も交付対象(補助対象)となる経費に追加されており、中小の地域金融機関が既存のシステムから共同システムへ移行する際のハードルが下がり、業務の効率化や経営基盤の強化に向けた取り組みがより進みやすくなる環境ができることが見込めれます。
なお、今回の改正では、信用金庫などの協同組織金融機関に対する優先出資を行いやすくするため、債権者保護手続の整備とあわせて優先出資の消却方法を弾力化(金融機能強化法に基づく資本参加に係る優先出資の消却の特例と同様に、十分な自己資本が確保されている場合には、資本金等を剰余金に振り替えて消却原資とすることを容認)することを盛り込んだ優先出資法(協同組織金融機関の優先出資に関する法律)の改正も併せて提出されています。
今後の信用金庫等の合併・経営統合の動向と零細・中小企業への影響
前記のとおり、少子高齢化・人口減少などに起因した「収益モデルの限界」「地域経済の危機」「コスト削減と競争力強化(「単独」では生き残れない)」などを背景に、信用金庫を始めとする地域金融機関が必然的に経営統合等を図り生き残りのための経営判断と実行しなければいけない状況にあること、そして、それを後押しする金融機能強化法の一部改正、経営基盤の強化(資本増強)を行いやすくする優先出資法の一部改正は、信用金庫など地域金融機関の再編を「1県1信金」や「広域巨大連合」(メガ信金)へと加速させ、人口減少下でも持続可能な金融インフラを構築するための強力なインセンティブとして機能、影響するものと思われます。
このような意味で、金融機能強化法の改正と期限延長等は、国が地域金融機関に対して「2031年までに再編を完了させ、自立した経営基盤を作れ」とラストスパートを促しているシグナルであるとも取ることが出来るのでしょうか。
そして、このようなメガ信金等に変身した信用金庫ですが、原則として、信用金庫は地域社会の繁栄を目的とした「非営利の相互扶助」を理念としていますが、果たして、今までと同じように、融資(特に、プロパー融資)をしてくれるか、わかりません。一般的には、信用金庫等は、いわゆる都市銀行(フィナンシャル系銀行)や地方銀行よりも融資の審査基準のハードルが低いと言われていますが、メガ信金等に変身した後は、そのハードルも都市銀行等と同じレベルまで上がっていくかもしれません。
そのため、融資を受ける側(零細・中小企業)の選別が今より、厳格になるかもしれません。前記の「地域金融機関を取り巻く経営環境の変化」で記したとおり、メガ信金等になることにより資金規模が拡大し、シンジケードローンへの参画など融資以外の新たな収益源を確保出来る可能性が高くなるほか、メガ信金等の広域営業内でのM&A関連出資などの増加、前述の優先出資法の改正(会員等に頼らない資本金増強の手段が強化)などにより、信金業務における融資の相対的地位・優先度が低くなる可能性があることも、融資の審査基準に影響があるかもしれません。
以上のことから、今後、零細・中小企業では、信用金庫等の地域金融機関から融資を受けるためには、きちんと裏付けのある事業の継続性・持続性・収益性を数値化した事業計画書(予算)の策定が絶対的必要事項になるかもしれません。根拠のある数字を使い将来の収益力をストーリー性を持って語れるかが、一つのポイントとなるかもしれません。
会社という箱物ではなく、その中身が大事ということです。ある許認可が必要な製造業の再生事例では、段階的に私的整理を行った結果、本業が黒字化、信用保証協会からの保証も正常化し、残元金について、「求償権消滅保証制度」が適用され、通常の銀行借入(中小企業活性化協議会が紹介した第二地銀がプロパー融資として一旦は受け皿に、最終的には、再び保証協会による100%保証付きに)になったそうです。
この企業は、元々、許認可が必要な特殊な事業というアドバンテージを持っていたのですが、事業の成長性・収益性・継続性の見込みが如何に大事かという事例だったと思います。このような特殊な事業であったからこそ、一旦は破綻寸前のゾンビ企業になりながらも、再生出来たのだと思います。事業の成長性、収益力が如何に大事かという事例だと思いました。
