事業再生における肝と付録「今後の地方・地域経済、コンパクトシティ(巨大集落)の推進」

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事業再生における肝

 先日、企業(主には、中小零細企業を念頭、以下同じ。)の事業再生(倒産寸前状態の企業を念頭、以下同じ。)に関しての事業再生コンサルタント講座を受講し、専門的な知識と豊富な経験、多くの修羅場を潜ってきた経験があるお二人の講師から貴重なお話しを聞く機会を得ました。

 そのお話しの中で、企業の事業再生においてポイントとなると感じたことを幾つか触れたいと思います。

産業の成長性の見極め

 まず、第1に、事業再生においては、その対象となる企業が属する産業の成長性を見極めること。
 教科書的に言うと、外部環境の分析ということになるでしょうか。「将来的に事業が発展・成長し、キャッシュフロー(以下「CF」)が生まれる姿を描けるか」ということです。企業価値(バリエーション)の算定においてもCFは最重要な要素であり、その企業が再生出来るか否かは、まず、この点をクリアしなければいけないことでしょうか。

 ここからは、私の自説になりますが、この「産業の成長性の見極め」というのは、その対象企業自体がコントロール出来ないものであり(電話機が黒電話から携帯電話になったように。)、これに抗う手段はないと思います。
 なので、困窮に陥った企業の事業の継続の是非を判断することは、裏を返せば、撤退(廃業)か事業の継続かを決める第一関門と言えるのではないでしょうか。
 事業承継においても”事業の磨き上げが大事”と言われるように、事業自体の今後のポンテンシャルがあるかどうか。それを限られた短い時間の中で見極めることが絶対必要不可欠のタスクとなるのだと思います。見込みがあるようなら、延命措置(資金繰りの手当て等)を図りながら、そのまま、金融機関等の支援を得て事業継続か、M&A(第二会社方式や会社分割、事業譲渡など)など、次の段階を考えていくことになるのだと思います。
 至極、当たり前のような内容ですが、ここで感情的な判断をしてしまうと、後々、再起不能になるほどのダメージを受けてしまうことになるのだと思います。したがって、判断の検討にあたっては、撤退もありき(ある意味、最低限度の生き残り、1%の敗者復活の可能性を残す)ということを頭にインプットしておくことが、肝なのだと思いました。

金融機関との付き合い方

 次に、第二ですが、金融機関との付き合い方です。この点については、私がこの記事で詳細を述べなくとも、企業経営者の方は、金融機関との信頼関係の構築など、その大事さはよく理解されていると思います。私が、今回の講座でポイントになると感じたのはこの金融機関を取り巻く環境の変化、具体的には、地域金融機関の経営統合が加速化・拡大化することが見込まれることです。

 ここからは、私のコメントですが、最近、新聞などで、メガバンク以外の地方銀行同士でのアライアンス(業務提携)やM&A・事業承継支援ファンドの組成、フィナンシャルグループをハブにした経営統合に関する記事をよく見かけるようになりました。このような背景には、地域中小企業の深刻な後継者不足と、地銀の収益モデル転換という2つの側面があるかと思います。
 具体的には、長く続いた低金利と人口減少で本業(融資)の儲けが減るなか、規制緩和(2019年の銀行法施行規則改正により、銀行による100%出資の「投資専門子会社」設立が解禁)を追い風に、地域の会社を救いながら新しい収益源を作るために、投資や再編に動いているようです。要約すると、「収益モデルの限界(「融資」だけでは稼げない)」「地域経済の危機(深刻な後継者不足など)」「コスト削減と競争力強化(「単独」では生き残れない)」ということでしょうか。
 それを裏付けるかのように、「2024年に実行された事業承継M&Aは922件うち107件が地方銀行などが絡むファンドなどの投資会社が介在しており、10年前との比較では10倍になった」そうです(レコフデータ調べ)。

 講師の先生の方によると「地銀でのこのような再編は、現在のところ、ひと段落し、今後は、信金同士での業務提携や合併が増えるのでは」とのことです。これを裏付けるかのように、日本経済新聞の本年2月25日付朝刊(P7)に、岡崎信用金庫(愛知県岡崎市)と浜松いわた信用金庫(静岡県浜松市)の業務連携発表に関する記事が報じられています。記事によると「双方の融資先企業のM&A(合併・買収)支援などを通じ、地域経済の活性化につなげる。」とされています。
 記事でも触れられていますが、信用金庫は、信用金庫法第10条の規定により、融資や預金の取引が行える範囲については、営業区域(地区)内、または、主には地区内在住、中小零細企業たる会員のみという制限を受けています。
 このため、都道府県を跨いだ広域連携や融資については、信金中央金庫「以下「信金中金」)がハブとなり、地方の枠を超えて都市部の需要と結びつけるケースや、隣接する県同士で経済圏を共有するケース(産学官連携による広域ビジネスマッチングや隣接県同士のインフラ・観光広域連携など)、信金中金や商工組合中央金庫がアレンジャーとなるシンジケードローンへの参画が主なものだったようです。

 しかし、前記の日経新聞の記事のとおり、「収益モデルの限界」「地域経済の危機」「コスト削減と競争力強化(「単独」では生き残れない)」などを背景に、信用金庫による都道府県を跨いだ広域連携は、現在進行形で非常に活発になっていると思われます(参照事例「中小企業向け創業・育成&成長ファンド『しんきんの翼第2号』の組成について」(信金キャピタル株式会社ホームページより)。
 このような都道府県を跨いだ広域連携の動きは、その延長線上として、単なる連携から信用金庫の再編(合併等)に繋がっていく可能性を示唆しているものと思われます。

金融機能強化法等の改正

 さらにこれを後押しするように、現在会期中である第221国会(特別国会)に、「金融機能の強化のための特別措置に関する法律等の一部を改正する法律案」(2026年2月27日閣議決定)が提出されています。この法律案は、「人口減少等の環境変化の中で、地域金融機関等(地方銀行、信用金庫、信用組合)が経営基盤の強化を図り、地域経済に貢献する役割を十分に発揮して いくための環境整備の一環として、金融機能強化法の資本参加制度・資金交付制度の期限延長・拡充等を行う。」(金融庁ホームページより。ただし、マーカー部分は筆者が追記)ことを目的としています。

 資本参加制度(2004年8月施行)と資本交付制度(令和2021年7月施行)は、金融機能強化法に元々あった制度です。今回の改正は、元々あったこの二段構えの制度を人口減少等の環境変化による地域経済の地盤沈下(収益性の低下)をこれ以上悪化することを防ぐため、制度の恒久化・拡充または、出口戦略を見据えた期限延長及び拡充という文脈で説明できるかと思料します。
 詳細な説明は、本記事では省略いたしますが、資本参加制度による公的資金による資本参加(公的資金の注入で、返済必要)については、申請期限を2026年3月末から「当分の間」と改正する予定です。法律で「当分の間」とされた事項については、通常、「期限なし、恒久化」を意味します。また、過去に、資本参加制度の適用要件について、東日本大震災発生時及び新型コロナ蔓延時に要件を緩和する特例制度が臨時的に行われましたが、今回の改正では、南海トラフ地震などの将来的な大規模災害や、新たな感染症の蔓延時に、迅速に資本を注入して金融機能を維持できる体制をあらかじめ整備されることになっています(告示での運用)。

 そして、本記事の内容と大きく関りがある資金交付制度の改正内容ですが、こちらも詳細な説明は省略させていただきますが、従来の「経営不振による救済型」の合併だけでなく、デジタル投資(DX)や専門性の強化を目的とした「前向きな経営統合」を強力にサポートする内容になっています。
 まず、「合併・経営統合等」については、現行(上限額30億円、補助率1/3)から「上限額50億、補助率 銀行1/2・信用組合・信用金庫等1/2)」に、更に、地域の持続可能性の確保等に特に資する場合については「上限額75億円、補助率1/2」とされる予定です(地域内でのシェアが高まる合併を特例的に認める独占禁止法の特例法が2030年11月に期限を迎えることに足並みを揃え、申請期限は、2026年3月末から2031年3月末に延長。)。
 また、合併・経営統合まで踏み込まずとも、地域経済活性化に向けた取組を前提に、事務やシステムの効率化を図る「システム共同化」が新たに支援対象となりました(申請期限は、設計・開発期間等考慮し、2036年3月末)。こちらについては、共同システムへの新規加盟等の場合「上限額15億円、補助率 銀行1/4、信用組合・信用金庫等1/3」、中央機関等(信金中金や全信連等)による協同組織金融機関(信用組合・信用金庫等)のための共同システムの更改の場合「上限額150億円、補助率1/4」になる予定とされているほか、株式取得による子会社化を支援対象に追加、システム共同化に伴うシステムの解約違約金も交付対象(補助対象)となる経費に追加されており、中小の地域金融機関が既存のシステムから共同システムへ移行する際のハードルが下がり、業務の効率化や経営基盤の強化に向けた取り組みがより進みやすくなる環境ができることが見込めれます。

 なお、今回の改正では、信用金庫などの協同組織金融機関に対する優先出資を行いやすくするため、債権者保護手続の整備とあわせて優先出資の消却方法を弾力化(金融機能強化法に基づく資本参加に係る優先出資の消却の特例と同様に、十分な自己資本が確保されている場合には、資本金等を剰余金に振り替えて消却原資とすることを容認)することを盛り込んだ優先出資法(協同組織金融機関の優先出資に関する法律)の改正も併せて提出されています。

今後の信用金庫等の合併・経営統合の動向と零細・中小企業への影響(信金等との付き合い方)

 前記のとおり、少子高齢化・人口減少などに起因した「収益モデルの限界」「地域経済の危機」「コスト削減と競争力強化(「単独」では生き残れない)」などを背景に、信用金庫を始めとする地域金融機関が必然的に経営統合等を図り生き残りのための経営判断と実行しなければいけない状況にあること、そして、それを後押しする金融機能強化法の一部改正、経営基盤の強化(資本増強)を行いやすくする優先出資法の一部改正は、信用金庫など地域金融機関の再編を「1県1信金」や「広域巨大連合」(メガ信金)へと加速させ、人口減少下でも持続可能な金融インフラを構築するための強力なインセンティブとして機能、影響するものと思われます。

 このような意味で、金融機能強化法の改正と期限延長等は、国が地域金融機関に対して「2031年までに再編を完了させ、自立した経営基盤を作れ」とラストスパートを促しているシグナルであるとも取ることが出来るのでしょうか。

 そして、このようなメガ信金等に変身した信用金庫ですが、原則として、信用金庫は地域社会の繁栄を目的とした「非営利の相互扶助」を理念としていますが、果たして、今までと同じように、融資(特に、プロパー融資)をしてくれるか、わかりません。一般的には、信用金庫等は、いわゆる都市銀行(フィナンシャル系銀行)や地方銀行よりも融資の審査基準のハードルが低いと言われていますが、メガ信金等に変身した後は、そのハードルも都市銀行等と同じレベルまで上がっていくかもしれません。
 そのため、融資を受ける側(零細・中小企業)の選別が今より、厳格になるかもしれません。前記の「地域金融機関を取り巻く経営環境の変化」で記したとおり、メガ信金等になることにより資金規模が拡大し、シンジケードローンへの参画など融資以外の新たな収益源を確保出来る可能性が高くなるほか、メガ信金等の広域営業内でのM&A関連出資などの増加、前述の優先出資法の改正(会員等に頼らない資本金増強の手段が強化)などにより、信金業務における融資の相対的地位・優先度が低くなる可能性があることも、融資の審査基準に影響があるかもしれません。

 以上のことから、今後、零細・中小企業では、信用金庫等の地域金融機関から融資を受けるためには、きちんと裏付けのある事業の継続性・持続性・収益性を数値化した事業計画書(予算)の策定が絶対的必要事項になるかもしれません。根拠のある数字を使い将来の収益力をストーリー性を持って語れるかが、一つのポイントとなるかもしれません。
 会社という箱物ではなく、その中身が大事ということです。事業再生コンサルタント講座の中では、許認可が必要な製造業の再生事例の話しがあり、段階的に私的整理を行った結果、本業が黒字化、信用保証協会からの保証も正常化し、残元金について、「求償権消滅保証制度」が適用され、通常の銀行借入(中小企業活性化協議会が紹介した第二地銀がプロパー融資として一旦は受け皿に、最終的には、再び保証協会による100%保証付きに)になったそうです。この企業は、元々、許認可が必要な特殊な事業というアドバンテージを持っていたのですが、事業の成長性・収益性・継続性の見込みが如何に大事かという事例だったと思います。このような特殊な事業であったからこそ、一旦は破綻寸前のゾンビ企業になりながらも、再生出来たのだと思います。 

社会保険料の滞納は以外と厳しい

 三つ目ですが、タイトルのとおりです。よく倒産事例の内容を見ると、過剰債務、収益性の低下から資金繰りが悪化し、最後は止めを刺すように、国税滞納又は社会保険料滞納がトリガーになり、民事再生法等の申請に至るというパターンが多く見受けられます。

 事業再生コンサルタント講座の中では、講師の先生より、国税滞納の場合だと、差し押さえ(滞納処分)される前に、税務署に相談した場合、税務署もある程度会社経営について理解があり、分割納付や換価の猶予等が認められるケースの割合が高いそうです。一方、年金事務所については、会社経営に対する理解があまりなく、国税徴収法の例による手続きを淡々と進めて行くそうで、換価の猶予等が認められにくいそうです(ここで言う、「理解」とは、恐らく、資金繰りなどだと思います。)
 全国全ての税務署若しくは年金事務所又は担当職員がそのような対応状況ではないと思いますが、社会保険料を滞納した場合、事業に必要な預金や設備が差し押さえられ、事業継続が困難になるほか、取引先や金融機関に知れ渡り、取引停止や融資引き揚げの原因ともなり得ます。

(付録)地方・地域経済の低迷と人口減少への対応(巨大集落の形成)

不可逆的な地方・地域経済の衰退

 事業再生コンサルタント講座の終盤、地方経済、地域経済の衰退についての話しがありました。とても生産性が上がらないだろう、もう何十年も経っている工場の設備、シャッター商店街など。いわゆる、三大都市圏等を以外の地方都市、首都圏等のカテゴリーには入るが、駅前には何もなく、シャッター商店街がある地域。講師の先生のお話しだと、それらの衰退地域の再生は難しいだろうというニュアンスでした。

 少子高齢化による人口密度の希薄化、生産年齢人口の減少、若者が都心に行くなどによる地方・地域人口の減少、インターネットによるビジネスモデルの転換又は商流の変化、技術革新(デジタル化)、消費者ニーズの変化による産業の衰退。

 こうした流れは、お叱りを受けるかもしれませんが、一言で言うと、「時代の変化」、元には戻せないかもしれません。
 なので、このような状態を何とかしようと、効果のない小銭を投入しても、あまり、実効性があるとは思えません。

 そうした意味で、地方経済・地域経済の低迷又は衰退をどぶさらい的に「事業再生」という手法で解消するには、限界があるのだと思いました。

根本の原因は、人口減少(人口密度の希薄化)

 これら地方経済・地域経済の低迷又は衰退の大きな要因になっているのが、私が言うまでもなく、少子高齢化による生産年齢人口の減少と人口密度の減少だと思います。本ブログでも取り上げた「山形屋(鹿児島市)の事業再生計画案承認(DDS・DESとスポンサー支援)」でも記しましたが、人口減少という一企業では対応出来ない根本的な問題があるのだと思います。
 

 生産年齢人口減少への対応は、今後、育成就労制度や特定技能受入れの拡充により対応が出来るかと思いますが、人口密度の減少への対応については、今、国内に住んでいる人たちの課題です。

 近年、我が国は、東日本大震災をはじめとする大規模な自然災害に遭遇しています。そして、その都度、大きな課題となるのが、災害に遭った方々の居住の問題、復興財源等です。住みやすい街、街の中心から半径3キロメール以内に、行政、病院、学校、スーパー等の商業施設があり、交通網(バスなど)が整備され、自然災害にも対応できる防災設備、備蓄基地があるというコンパクトシティを、各都道府県の中心地点(県庁所在地など)と鉄道網などでアクセス出来る場所に造成した方が地域社会における人口密度が高まり、それなりの相乗効果が生まれるほか、自然災害からのレジリエンスも高まるのではないでしょうか。

 詳細は省略しますが、既に、2014年に都市再生特別措置法(いわゆる「コンパクトシティ法」)が施行されています。法律では、コンパクトシティを「居住誘導区域」とし、成功事例もあるようですが、あまり、浸透はしていないようです。

 既存の他の法律や日本国憲法第22条(居住・移転の自由)との兼ね合い、住んでる方の財産(所有権)との兼ね合い、住み慣れた街への愛着など多岐にわたるハードルがあるのは承知ですが、自然災害に加え、近年では地政学リスクを発端としたサプライチェーンの断絶リスクによる原材料の高騰などを見ていると、住む場所と産業地域を区分し、かって住居エリアだった場所を近代的な農地にし、自給自足の強化を図るなど、計画的な、強靭な国土作りを土台にして、人々が住みやすい巨大集落を形成していくこともありだと思います。

 農地以外では、物流基地の拠点及びハブ拠点、最近では、AIのためのデータセンターなど地域が持つ自然的な優位性を活かした産業地域を形成し、その産業地域とコンパクトシティを結ぶ交通網を整理していく。

 さらに、個々のコンパクトシティのうち、メインとなるコンパクトシティと各サテライトコンパクトシティ間の交通網を整備し、コンパクトシティ間の地域経済の相乗効果等を図るなども考えられます。

 少し、まとまりがない内容となりましたが、人口密度を上げることによる相乗効果、自然災害からのレジリエンスなど期待して、コンパクトシティ造成の推進を図ることが、地方経済・地域経済の存続性を高める一つの方策だと考えます。

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