同一労働同一賃金ガイドライン見直し(案)を踏まえた総括

(Chat GPTにより生成)

 前回の二つ記事、「同一労働同一賃金の施行5年後見直しに向けた報告書案を提示(その1)」及び同一労働同一賃金の施行5年後見直しに向けた報告書案を提示(その2)」では、主には変更された事項等をピックアップして記事にしましたが、今回はそれ以外の変更もなかった待遇項目を含め、概要を簡易な内容で整理しました。
 記事の内容(情報)は、昨年12月の「労働政策審議会<職業安定分科会 雇用環境・均等分科会同一労働同一賃金部会>(第 29 回)」の資料に基づき、情報提供を目的として公表資料から当ブログ運営者が情報収集し、現時点での一般的な概要を参考としてまとめたものになっています。また、見直し後ガイドラインは施行が本年10月と予定されていることから、今後、内容が本記事の内容と異なる内容に変更される場合もありますので、ご留意ください。
 なお、個々の情報等に係る詳細な内容については、厚生労働省公表の資料をご覧いただき、ご確認をいただくと共に、今後の個々の具体的な対応(実行)については、弁護士、顧問社会保険労務士等の専門家にご相談、ご確認いただき、自己責任においてご判断くださいますよう、お願いいたします。

目次

全般的な考え方

(1)待遇に相違がある場合
 「将来の期待値本的」という主観的又は抽象的な説明では足りず、客観的及び具体的職務実態に照らし合わせて、不合理性を判断。

(2)通常の労働者の労働条件を不利益に変更することで不合理性を解消することはNG

(3)均衡・均等待遇を判断する3要素と重要ポイント
①職務の内容(「業務の内容 + 責任の程度」、現場での「実態」が一致すれば同一支給が原則。)
②職務内容・配置の変更範囲(「将来の転勤・昇進等の可能性」、後の配置転換や勤務地の変更範囲が同一かなど。)
③その他の事情(成果、能力、経験、労使慣行、労使交渉の経緯や結果、定年後の継続雇用等の諸事情)

(4)待遇差の十分な説明
 待遇差の理由を十分に説明しない、または労働者の意向を無視した一方的決定は、「その他の事情」に含まれ、不合理性を裏付ける事情として考慮される。

(5)「正社員人材確保論」
 いわゆる「正社員人材確保論」のみをもって待遇差が不合理ではないと当然に認められるものではない。

各待遇項目別クイックリファレンス表など

基本給

 

基本給の 性質基本的な考え方問題となる例(NG)
能力・経験同一の能力・経験を持つ場合は同一の支給、相違がある場合はその相違に応じた支給が必要。正社員について、経験があることを理由に高く支給しているが、その経験が現在の業務に関連性を持たない場合。
業績・成果同一の業績を上げている場合は同一の支給、相違がある場合はその相違に応じた支給が必要。短時間労働者に通常の正社員と同じ目標を設定し、達成できないことを理由に一切支給しない。
勤続年数同一の勤続年数であれば同一の支給が原則です。有期雇用の場合は、現在の契約期間だけでなく、契約更新を合算した「通算期間」で評価しなければならない。契約更新を繰り返しているのに、現在の契約期間のみで勤続年数を評価して支給する。
昇給「勤続による能力向上」に伴う昇給についても、短時間・有期雇用労働者だからといって除外することはできません。実態として能力が向上しているならば、正社員と同様の評価に基づく昇給が必要。

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賞与

 

基本的な考え方問題となる例(NG)
会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給するものについて、通常の労働者と同一の貢献である短時間・有期雇用労働者には、貢献に応じた部分につき、通常の労働者と同一の賞与を支給しなければならない。また、貢献に一定の相違がある場合においては、その相違に応じた賞与を支給しなければならない。・賞与について、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給している場合において、通常の労働者である者と同一の会社の業績等への貢献がある有期雇用労働者に対し、通常の労働者と同一の賞与を支給していない。
・賞与について、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給している場合においては、通常の労働者には職務の内容や会社の業績等への貢献等にかかわらず全員に何らかの賞与を支給しているが、短時間・有期雇用労働者には支給していない。

※留意事項

〇賞与は、その性質が多義的であるため、「性質及び目的」の峻別が判断の鍵となります。

〇賞与には、「労務(賃金)の対価の後払い」「功労報償」「生活費の補助」「労働意欲の向上」といった多様な性質及び目的が含まれています。これらの目的が短時間・有期雇用労働者にも当てはまるにも関わらず、一律に不支給とすることは、法的リスクが高くなります。

〇通常の労働者との職務内容等に相違がある場合でも、賞与の性質及び目的が当てはまる短時間・有期雇用労働者には、相違に応じた均衡のとれた賞与の支給が原則、必要。この場合において、相違に応じた均衡のとれた賞与が不支給であった場合には、この見合いとして、労使交渉を経て、賞与の性質及び目的が当てはまらない短時間・有期雇用労働者よりも基本給を高く設定するなどの明確な代替措置、補填措置がない場合は、不合理と判断される可能性が非常に高くなります。

〇「業績連動」を理由にする場合、非正規社員にも寸志や少額の賞与を支給することで、法的な「不合理」の指摘を回避しやすくなります。ゼロか百かではなく、「役割に応じた比率での支給」を検討した方がベターです。

退職金

 退職金については。賞与と同じ考え方です。退職金には、「労務(賃金)の対価の後払い」「功労報償」等の性質及び目的が含まれています。これらの目的が短時間・有期雇用労働者にも当てはまるにも関わらず、一律に不支給とすることは、法的リスクが高くなります。

 特に、勤続年数の長い短時間・有期雇用労働者に、一切退職金を支給しないことは、法的リスクが高くなる可能性があります。通常の労働者との職務内容等に相違がある場合でも、賞与の性質及び目的が当てはまる短時間・有期雇用労働者には、相違に応じた均衡のとれた退職金の支給が原則、必要。
 この場合において、相違に応じた均衡のとれた退職金が不支給であった場合には、この見合いとして、労使交渉を経て、退職金の性質及び目的が当てはまらない短時間・有期雇用労働者よりも基本給を高く設定するなどの明確な代替措置、補填措置がない場合は、不合理と判断される可能性が非常に高くなることは、賞与の場合と同様です。
 退職共済(中退共)などを活用し、低コストで積み立てる仕組みの検討の余地があります。

各種手当  

手当の特徴

 手当領域は支給目的が特定しやすいため、不合理性の指摘が最も容易です。特に実費補填的性質を持つものは、差異を設ける合理性がほぼ存在しません。

各種手当のクイックリファレンス表(17の事例で見る「OK/NG」の境界線)

 各種手当について、支給の考え方、典型的な「問題となる例(NG)」、放置した場合の法的リスク(「中~高」と「高」)について、簡易表としてまとめしたに。内容は、あくまでも、簡易、概略なので、不合理性の判断については、個々の各種手当の性質・目的、職務の内容等(その他の事情を含む)に照らし合わせて、具体的な検討が必要です。 

 なお、表のスペースもあり、この表では、通常の労働者を「正社員」と、短時間・有期雇用労働者を「非正規」という言葉に置き換えています。予め、ご了承ください(次の福利厚生も同じ。)。

手当名支給の考え方典型的な「問題となる例(NG)」リスク
1. 役職手当役職の内容・責任に対して支給同一の役職(店長等)なのに非正規を理由に低く支給。中~高
2. 特殊作業手当業務の危険度や作業環境に対して支給同一の危険業務に従事している非正規に支給しない。
3. 特殊勤務手当早朝・深夜等の勤務形態に対して支給シフト制で同様に深夜勤務を行う非正規に支給しない。
4. 精皆勤手当出勤の奨励・欠勤防止に対して支給同様の出勤が必要な非正規に支給しない。
5. 時間外労働手当所定外労働への対価。同一割増率が必要非正規であることを理由に割増率を低く設定する。
6. 深夜労働手当深夜の労働に対する補償職務内容が同一の非正規に対し。深夜労働又は休日労働以外の時間が短いことを理由に手当の単価を下げる。
7. 休日労働手当休日勤務への対価
8. 無事故手当安全運転や無事故の継続に対して支給業務内容が同一の非正規にのみ支給しない。
9. 通勤手当通勤実費の補填非正規のみ上限を極端に低くする、または支給しない。
10. 出張旅費出張に伴う実費補填出張に従事した非正規にのみ旅費を支給しない。
11. 家族手当継続勤務が見込まれる場合に支給更新を繰り返し、長く働く見込みの非正規に支給しない。中~高
12. 住宅手当(A)転居を伴う配置変更がある場合に支給転居の可能性があるとして正社員には支給、非正規は不支給だが、実態は、転居がない。中~高
13. 住宅手当(B)転居有無に関わらず支給される場合正社員に支給、非正規には一切不支給。中~高
14. 食事手当食費の負担補助昼食休憩を挟む実態が同じなのに非正規にのみ不支給又は、手当が正社員に比べ低い。
15. 単身赴任手当二重生活の負担補填同一の支給要件を満たす非正規にのみ支給しない。
16. 地域手当(A)特定地域での勤務に対する補償正社員及び非正規ともに全国一律給与の適用があり、かつ、転勤もある場合において、非正規には不支給。
17. 地域手当(B)地域採用の非正規地域基本給に地域の物価が反映されていない。

福利厚生

 

待遇名非正規への対応(基本的な考え方)留意事項
1.福利厚生施設同じ事業所で働く以上、給食施設(社員食堂)、休憩室、更衣室については同一の利用を認めなければなりません。利用料金や割引率についても、不合理な差を設けることは禁止されます。
2. 転勤者用住宅正社員と同一の支給要件(転勤の有無、扶養家族の有無、住宅の賃貸又は収入の額)を満たす場合は、利用を認めなければいけません。同一の支給要件を満たしているのに、利用を認めないことは、不合理とされる蓋然性が高いです。
3.慶弔休暇並びに健康診断に伴う勤務免除及び勤務時間中に健康診断を受診する場合の給与保障正社員と同一の慶弔休暇の付与並びに健康診断に伴う勤務免除及び有給の保障を行う必要があります。正社員と同じ出勤日及び勤務時間である非正規に付与又は免除・有給保障を行わないことは、不合理と判断される蓋然性が高いです。但し、週2日出勤の非正規には、振替対応など勤務日数に応じた柔軟な対応は可。
4. 病気休暇正社員と同一病気休暇を認めなければいけません。また、労働契約が有期雇用であっても、労働契約が終了するまでの期間を踏まえた取得を認めなければいけません。今回の見直し(案)で追記された内容ですが、病気休暇中の給与の保障(有給の病気休暇等)については、「契約更新を繰り返しており、長期継続勤務が見込まれる」実態がある場合、正社員と同一の保障が求められます。
最高裁では、有給の病気休暇等について、その趣旨・目的は「長期継続勤務の期待と確保」から行われているものとしています。よって、相応に「継続勤務が見込まれる」非正規(少なくとも5年以上の勤務)には、給与保障をしないと不合理とされる蓋然性が高いです。
5. 夏季冬季休暇正社員と同様の夏季冬季休暇を与えないといけません。所定労働日数、勤務時間、通算勤務期間等を確認し、社員との比較が必要な場合もあり。
6. 法定外休暇勤続期間に応じて認めているものについては、正社員と同一の勤続期間を有する非正規にも同一のものを付与しなければいけません。また、非正規の勤続期間算定にあたっては、当初の労働契約の期間から通算しなければいけません。正社員と非正規が同じ勤続年数の場合、正社員には勤続年数に応じた付与、短時間労働者については、所定労働時間に比例した付与とすることは、問題にならない。
7. 褒賞一定の期間勤続した正社員に付与するものである場合、同じ勤続年数を有する非正規にも同一の褒賞を付与しなければいけません。勤続年数が同一なのに、非正規には支給しないのは、不合理とされる蓋然性が高いです。
8.教育訓練教育訓練であって、現在の職務の遂行に必要な技能又は知識を習得 するために実施するもの。正社員と職務の内容が同一である非正規には、通常の労働者と同一の教育訓練を実施しなければいけません。また、職務の内容に一定の相違がある場合におい ては、その相違に応じた教育訓練を実施しなければいけません。これは単なる法的義務ではなく、非正規労働者のスキルを高めることが、将来的な生産性向上に資することから、不合理かどうか以前の話しだと思料します。    
9.安全管理に関する措置及び給付正社員と同一の業務環境に置かれている非正規には、正社員と同一の安全管理に関する措置及び給付をしなけ ればならない。労働契約法、労働安全衛生法等により、事業主の義務でもあります。

多様な正社員への対応 

 多様な正社員、いわゆる無期雇用フルタイム労働者(勤務地限定正社員、職務限定正社員及び短時間正社員など)については、労働契約法第3条第2項の規定による「均衡を考慮」が必要とされたうえで、この「均衡の考慮」については、短時間・有期雇用労働者ガイドラインの趣旨が考慮されるべきことが明記されています。つまり、このような多様な正社員については、短時間・有期雇用労働者ではありませんが、本ガイドラインの趣旨に基づいた均衡ある待遇が求められることが明記されています。

 また、無期雇用転換労働者の労働条件労働条件の決定に当たっては、当該転換に係る有期雇用労働者と通常の労働者との間の不合理と認められる待遇の相違の有無についてあらかじめ点検し、そのような待遇の相違がある場合には、確実に解消することが求められているほか、無期雇用後の労働条件について、前記の「均衡を考慮」した事項(=不合理性がある場合については、その理由等をガイドラインに則した内容、方法等で説明するなど)を説明するべき努力義務が課されています。

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